土地を育てる技術

先日のことですが、普段の作庭技術講座とはやや異なるもののとても面白い講座に参加してきました。

一般社団法人地湧の杜さんが主催する『里山環境改善講座』。小田原市郊外の農村地帯にて、崩壊の危険に晒された農道を整備しようという内容です。

指導を務めて下さったのは高田造園設計事務所を率いて庭仕事に従事する傍ら、住宅地や里山が自然と共生できる環境づくりのノウハウを確立してNPO法人地球守の代表理事として全国で活動を展開なさっておられる高田宏臣氏です。氏の作庭や土中環境改善についてのコラムは私も雑誌で何度か目にした事がありましたが、ご縁やタイミングが程よく重なってこの度初めてお会いする事となりました。

今回の講習内容は、コンクリート頼みの近代土木記述による力任せの造成から数十年を経て各地で崩壊が始まりつつある農道沿いの急斜面を、農道としての機能を保ちながら日本古来の土木技術を用いて生きた斜面として再生させるという内容でした。

従来の土木造成技術は地盤を締め固めて成形し、雨水を極力排水する工法。これでは植物が根付かないため地盤は痩せて脆くなり、雨で徐々に崩れていくのは勿論、近頃毎年の様に耳にする〝〇〇年に一度の豪雨〟によって一気に土砂崩れを起こしかねません。対して高田氏の唱える伝統土木工法は、地盤の通気通水性を改善して植物が深く根を差し込める様に導き、雨水は排除せず浸透と浸潤を繰り返してゆっくりと土中に返すという、、一度きり講習会に参加した私が述べるのは厚顔ですが、大地の呼吸を取り戻すかの様な工法でした。

二日間の講習は新たに知り得た事も多く、素晴らしく為になる時間でした。何より有意義だったのは、〝これは自分の作庭に活かせるかも〟と考えてしまう一介の庭屋である私が、庭師の範疇を超えてより広い環境に取り組んでおられる高田宏臣 氏にお会い出来た事。

或いは、私は〝庭〟をまだまだ小さな世界としてしか捉えられておらず、本当はもっと大きな世界なのかもしれないと思い当たった事。

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