葺き仕舞い 庭盛会の活動

 九つ井宇庵茶室の茅葺替え工事は、先日オーナー様への引き渡しが無事完了して晴れての完成となりました。

 一年以上寝かせて割れの無い真竹を下地に使い、元の屋根はオギ・稲藁・シマガヤ・ヤマガヤの四種を使った上品な作りになっており、表層に使われていて朽ち果てていたヤマガヤは外し、残った三種のうち使える部分は綺麗に整えて再利用し、新たに持ち込んだ朝霧高原のススキを加えての葺き直しです。築後30年近く経った屋根ですが、雨に当たらない内部の茅はびっくりするくらい綺麗なんですよ。撤去した茅くずは、置き場の一角でやり始めた畑に使いたくて引き取りました。硬いうちはマルチング材として、朽ちればそのまま土壌に鋤き混む事で良質な土壌改良剤となります。”使えるものは再利用し、茅くずは大地に還す”、茅葺とは、本物の循環社会を体現した仕事なんですね。棟は重ねた杉皮を丸竹の簾で抑えたシンプルな仕上がりで、素朴かつ頑丈な作りになっています。

 引き渡し前日、撤収の完了した露地で一人仕上げ掃除をしながら振り返るに、決して順風満帆なばかりではない工事でした。五月下旬に乗り込んでから当初想定では三週間で終わる見込みだったのが、雨に降られたりトラブル対応に追われたりで気がつけば七月半ば。母屋と軒続きの茅葺き屋根という厄介な構造が祟り、講習会として仮に設けていた最初の一週間は仕切り直しもあってあまり進まず、参加してくれた講習生達には申し訳ない思いもさせてしまいました。天気予報は悪い意味で当たらず、意見の対立で現場の空気が悪くなる事もありました。

 けれど始まった工事は必ず終わります。主に屋根職人さん方の頑張りであらゆる問題を克服し、およそ二ヶ月の工期を経て、朽ち果てていた屋根が金色に輝く真新しい茅葺屋根へと生まれ変わりました。

 一年前に座談会でお会いして以来、茅束の作り方や現場での指導・茅刈りや野焼きなど、茅葺の一通りを指導して下さった杉嵜さんをはじめとする富士かやぶき建築 茅吉の皆様、難工事を見事やり切って頂き誠に有難うございました。富士山麓からもたらされた茅葺きの精神は、神奈川の庭師の心にしかと根付きました。各々の庭でいつか大きく芽吹き開かせる事を目指します。

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