置き場での屋根葺きもようやく終わりました。あとはこれを現場の柱に乗せればひとまずの完成。気が逸りますがその前にもうひと仕事を。
屋根上げの前に、現場に立ててある本柱に袖垣を取り付けます。当初は先に屋根を乗せてから取り付ける予定でしたが、ここまでの工程を経てふと思い当たったんです。この編笠門にとって袖垣は化粧ではなく、本柱・控柱・袖垣の親柱の計六本の柱で強度を請け負った四脚門なのではないか、と。であれば屋根の前に六柱全て立てておかねばいけません。この着想はここまで手を動かしてないと辿り着けなかった。
名栗丸太の頭を頭巾に切り、広小舞と同じ青森ヒバの通し貫を上下に差します。立子には斫ったカイヅカイブキを取り付けました。垂木にも使っていますが、赤身まで削り出したカイヅカイブキはハードウッド並に硬く信頼性があります。それにしても、三月末に立てた本柱・控柱と、刻んだばかりの袖垣の色味の違う事。つくづく時間が経ったなぁと。
現場での準備を万端にしたら改めて屋根上げに取り組みます。初夏から小屋に陣取っていた屋根をクレーンで吊り出し、この時点でちょっと感無量。約半年ぶりに再会した柱のほぞと梁のほぞ穴は、しばらくギクシャクしていたもののちょっと調整してストンと嵌め込み、丸込栓を打ち込んでしっかりと繋ぎました。
昨年末より材料集めから始まった編笠門制作、これにて大工仕事が全て完了しました。
お施主様のご厚意にて敷地内でやらせて貰ったものの、手習いなのではなからお金を頂戴する気は無く、かといって手は抜かず一所懸命にやり切った、私が持つ木工技術の粋を結集させた露地門です。数歩離れてしばらく眺めて思う事、これが仕事であれば全て引っこ抜いて一からやり直すであろう、己の未熟さの具現化、まさに手習いのレベルでした。
肝心なのは、どこを直すか・どういう遣り方でやるのか、今の私には答えが見えている事。庭門の中でも最難関の一つである編笠門を失敗といえど形にして、失敗の理由と対策を把握できた今の私なら、おおよその庭門を作りあげられる事。材料集めからここまで約一年、今後の私にとって絶対に必要な時間でした。
残すところは三和土。
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