門松

年末は庭師にとって最繁忙期。手入れ仕事が忙しくなるのに加えて、11月の半ばを過ぎたら門松作りの準備に取り掛かります。

この時期の物置小屋はさながら戦場

初詣などで街中を出歩けば、大小色んな作りの門松をご覧になると思います。

うちの門松は稲藁を編み込んで作る伝統的な遣り方で、これが一番肝心かつ手間のかかる工程です。地元藤沢でその年に刈り取られた稲藁写真左をレーキの刃を通して荒選(すぐ)りし写真中央、それから更に一本ずつ指でほつれを毟って仕上げ選りします写真右。ご覧の通りひと抱えの束がひと掴みに、およそ6分の1にまで細くなります。実際のところ荒選りした段階の藁でも充分と言えば充分で、門松作りを始めた当初は仕上げ選りまでやってませんでした。しかしながら、それぞれの選りで作成した門松を並べて見た時わずかながら明らかに仕上がりが違うと感じて以来、仕上げ選りまでこだわって作る様にしています。

藁選りがひと段落したら竹を刻む工程に着手します。

使うのは真竹。うちの置場は竹林に接していて、地主さんに許可を頂いて程よい太さのものを自分で切り出してきます。切り出した竹は丁寧に磨いてアクを取れば、光沢のある綺麗な竹に仕上がります。竹の頭は、斜めに切る『削ぎ』・節のところで平に切る『寸胴』の二種類あります。削ぎは徳川家康が由来とされていて主に関東で、寸胴は江戸期以前の京都が日本の中心だった頃のものということで関西で、それぞれ主流とされています。うちではお施主さんの要望に合わせてどちらも作ります。写真の刃物は銑(せん)という削ぎ専用の道具で、両側の柄をしっかり握って一息に竹を削ぎ落とします。

稲藁・竹が終わったら次は松。若松という門松用に販売されている松を長穂・短穂に切り分けて、ようやく全ての材料が出来上がり。次はいよいよ門松の製作工程です。稲藁をペール缶に掻き付けて穂先を編み込み、下から七・五・三周ずつ縄で巻きます。うちでは藁縄ではなく青みの強いイグサ縄を使っていて、飾り結びもばっちりと。竹もまた容器の縁から七五三の比率で頭がでる様に切り揃えます。今年はかなりてんてこ舞いでこの辺りの写真をすっかり撮り損ねてしまいまして、誠に申し訳ありません…

  

諸々省略いたしまして出来た物がこれ!

うちの門松は湘南界隈の個人宅に据える事が多いので比較的小振りな作りです。向かって左が雄、白葉牡丹に下段の七周巻きは捻れイボ結びで男性を表し、右の雌は赤葉牡丹に輪結びで女性を表しています。真ん中の五周巻きを梅結びで絞めているのは共通ですね。置場で製作するのは以上の定型までで、お施主様のお宅に据える際にその庭に生えている植栽を一差し加えるのがニワヤ小谷流。

門松以外に松飾りも製作しております。若松にウラジロ・お庭から取ってきたナンテンをくくり、和紙を巻いて水引で梅の飾り結びを絞めて完成。向かって左は白梅で雄を・右は紅梅で雌を表しています。

お持ちする日取りにも慣わしがあります。諸説ありますが特に忌み日とされているのが29日と31日。29日は『にじゅうく=二重苦』、31日は『一夜飾り』といって飾ってすぐ取り外す事になるのは葬式に繋がるとされそれぞれ縁起が悪いとされています。だから30日でも良いと言えば良いのですが、その頃には仕事を納めて機械道具や置場の大掃除をしたい所なので、うちでは28日までに据えさせて頂く事にしております。今年は27日に無事納める事が出来ました。

門松を納め終わると肩の力がごっそり抜けるのも毎年恒例。ですがまだ手入れのお宅は残っています。あと一息!

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