クスノキ

神社や公園によく見られ、大木になること・樟脳が取れることでよく知られているクスノキですが、神聖な樹・霊験のある樹とも言われているのはご存知でしょうか。私もクスノキに関してちょっと不思議な経験がありまして。。。

10年ほど前になります。大磯に住んでいた頃、現地で会員制農園を運営しているNPO法人とちょっとした関わりを持っていて、頼まれて農園の一画にクスノキを植えた事がありました。一人でも担げる様な3mほどの苗木で、特に問題もなく植栽工事は完了し、それから特に気にする事もなく日々過ごしていました。

それがある日、確か翌年の初夏だったと思うのですが、無性に、猛烈にこの樹の事が気になったんです。すぐにでも様子を見に行きたい、けれどその頃はもう藤沢に引っ越していて、次男も産まれて仕事を詰め込んでおり、どうにか時間を作れたのは一週間後でした。

数ヶ月ぶりにクスノキを一目見て、焦りました。カミキリムシでしょうね、幹をぐるりと一周齧られていて、形成層がまる見えの状態になっていたんです。樹木は表皮から近いこの形成層で水分と養分を伝達しているから、それが一周剥き出しというのは致命傷になりかねない。慌てて諸々の薬剤を買いに走りました。

治療にあたりながらしみじみと思いました。この傷口の新しさは、食われて一週間程度じゃないか、この事か、あの時こいつは俺に助けを求めていたのか、と。何を根拠に・思い込み・そう突っ込まれるかもしれませんが、私はすんなりと受け入れていました。遅くなって済まなかった。

それからは暫く、時々手を入れながら苗木の段階を過ぎるまで面倒を見ていました。若木になり始めた頃には、色々あってNPO法人と付き合わなくなっており、それでも時折様子だけは見ていました。そして先日、久しぶりに会いに行ってきました。

“樹に呼ばれる”、、、そんな体験をしたのは後にも先にもあの時の一度きりで、それ以来こいつの声も聞こえません。けれど、今では樹高10m弱でしょうか、立派な成木になり、声は聞こえずとも涼やかな葉擦れの音で出迎えてくれました。

久しぶり、大きくなったな。俺はどうかな、大きくなれたかな。幹に手を触れ、様子を確認しながら束の間語りかけてきました。

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