大工の技法 庭盛会の活動

 屋根の葺き替え・袖垣取り替えが終わり、見える部分はほぼ補修が完了した宇庵編笠門。残すは、むかし倒木により折れてしまい、応急補修した控え柱の本格的な根継ぎです。大工の伝統工法の中でも強度が高く、構造的には比較的シンプルな〝金輪継ぎ〟に、本職の大工を講師に招いて皆で取り組みました。

 現状はL字に切ってビス打ちしただけの簡易的な継ぎ方なので、ちょっと揺らすとパカパカと動き、門の補強になっているとは言い難い直し方です。対して金輪継ぎはあらゆる方向からの負荷に耐えられ、我々庭師にとっても使い所がある技法です。

 大工仕事の最も肝心な工程は、一番最初の墨出しです。これがちょっとでもズレると綺麗に組み上がらない。そしてこの継ぎ方は本来なら家屋の修繕に用いられるもの、つまり直線的な角柱や円柱に用いる事が多いのに対し、今回はちょうなで六面に斫られ、尚且つひん曲がった名栗柱。数週間前に打ち合わせをした時、講師を務めてくれた大工さんは現状を確認して頭を抱えていましたが(苦笑)、当日までにはしっかりと手順を考え、型を作って来てくれました。

 編笠門から控え柱を外し、根継ぎ様に持ってきた栗丸太ともに型通りに柱に墨を出し、鋸と鑿で慎重に刻んでいきます。継ぎ手は上下の柱とも寸分たがわず同じ面を作り、真ん中に込栓(コミセン)を差して突っ張らせる事で、強度の高い一本の柱に仕上げるという工法です。やっていく中で教えてくれる遣り方や用いられる道具はなるほど本職ならでは、こういう場でないと知り様が無く、庭仕事にも活かせそうな貴重な知識です。

 庭師仕事ではあまり求められる事の無い高い精度に手こずりながらも、上下の柱を何度も当てては鑿で調整し、ようやく一本に継いで編笠門に設置し直したのは夜も更けてからでした。

 伝統技法の金輪継ぎ、しかも捻れた名栗柱の根継ぎという本職も唸る難工事を経て、生まれ変わった控え柱は元の場所におさまりました。これにて春から取り組んできた修復工事は全て完了し、名工により鎌倉の片隅に生み出された編笠門が、30余年の時を経て〝元の姿に〟生まれ変わりました。

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